日記のようなもの_2009.1月

気がついたら年が変わっていた。0時45分。上着を来て近所の小さな神社へお参りに行く。予想外に人がたくさん参りに来ていて行列を作っていた。子供から老人まで多くの人たちが集まり、その肌に紅白歌合戦の余韻を忍ばせ、新年と寒気に気持ちのよい雰囲気を漂わせていた。

目に止まったのは、10くらいの少女。風呂上がりのまだ渇いてない髪を青いピンで止め、母親の黒いコートの袖につかまって、うっすらと大人びた表情で微笑を浮かべていた。きれいな女性になって欲しい。

2009.1.1



ある時、私は危険なはずみの中で前世を少し見たことがある。前世も私だった。
おそろしい。
1.5



改めて、石切の参道を見物しようと歩く。日曜日なので人も多く、それがかえって新鮮で面白い。
相変わらず、占い屋が異常に多い。しかもどの店も大繁盛で何人ものお客が順番を待っている。占い師は鋭い目を客の目に合わせ、決して離さない。店先には芸能人の写真とテレビ取材の様子を看板にする(笑)
よい感じの漬け物屋に入る。入ると、自家製のあったかい梅昆茶を振る舞ってくれる。いくつか試食し、かぶの浅漬け(315円)を一つ買う。美味。

前から気になっていた漢方薬のお店に入る。身体に異常はないし、特に用事はないが。なんか興味を刺激するお店。建物自体も古い民家で、観光客を寄せ付けない空気を全開に放出している。
狭~い店内にはぎっしりと瓶が並び、"まむし頭""さるのこしかけ""麻之実""木天蓼"などなどなど。
するとこれまた良い感じのおじいさんが、「いらっしゃいませ~」と声をかけてくれる。「いや特に用はないのですが…少し見たくて。」「そうですか~、はい~」 上手く言えないが、とても特徴的な話し方をされる人だった。不思議に気分がよい。 歳を重ねたじいちゃん、ばあちゃん方は皆、賢く可愛く良い感じ~などと思っていた時もあったが、こういう所に住み、よーく観察したり、接してみると実はそうでもない。よい感じの話し方や雰囲気、振る舞いをされる方などは歳に関係なく少ないものである。 この薬屋のおじいさんは実に素晴らしく思えた。 帰り際もお互いに、もの凄く低い腰で挨拶をし、この異様な店を後にする。

少し歩くと、漬け物横丁なる所があり、小さな店が集まっている。その一軒に雑貨屋みたいな店があり、服なども売っている。その服が何故か、モード界の巨匠YOJI YAMAMOTOの服だった。えっ?凄く意外!店の人も、いかにも参道でお店やってますって雰囲気のおばちゃんである。所がそのおばちゃんが身に纏っているのは、真っ黒のYOJI YAMAMOTOの奇抜な服。しかもよく似合っている。しかも安い。…なるほど、日本で最もモードな人たちは大阪のおばちゃんという事か!それなら、ここにYOJI YAMAMOTOがあるのも意外ではないという事だ!要は考え方しだい。

意外なものを見つけるのは本当によい。価値観や思い込みが、ぐにゃぐにゃと曲がり、世の中のほとんどが思い込みであることや、習慣の恐ろしさ、概念をぶち壊す必要性を再確認できる。だから信じられない風景を、できるだけ見たいと思う。ちっちゃな頭で思い込まないように、勘違いしないように、勘違いするために。

帰って、コーヒーを呑む。なかなか美味。
僕の身体の調子が悪くなったら、あの薬屋のおじいさんに相談しようと考えた。
1.11



年末にあらゆるこだわりを捨てる事を覚えてから、¨真面目な感じ¨が急に苦手になった。それまで事あるごとに聴いていた現代音楽を聴く頻度が減り、ブルースや民族音楽を聴く頻度が増える。急に娯楽映画を観たくなったり、読み物の時も真面目な言葉に惹かれない。あれだこれだと考えて作品を作るのは当たり前の事だが、それ以前にその人間の持つバイタリティというか、良くも悪くも美しくも汚くも欲望というか、エロさとかユーモアとか、そういったものが、とってもフリーな状態で溢れている。そういうものが今まで惹かれてきた音楽の中に少ないような気がして来て、もちろんストイックな姿勢で真面目に考えなければ、何にもならないのだが、少し作品作りとか思想とかが先行し過ぎているんじゃなーい?などと思ったりする。これはまさしく僕が私に対して思っている事でもあるわけで、だから今の私のモットーはなるべく真面目な事を口にしない…だぁ。

1.18



何から何までクソだクソだと言っていると、クソなものばかりが寄ってきます。
しかし、クソなものをクソだと言えないからには、良いものを良いとも言えません。 そんな人を見た。

1.20



盤を作りたい。「本当に凄いのができるんだ!」って思っている。いやもうこれは本当に事実っ!
しかし、それとは別にそれを作り発表する環境が作られていないことは痛感している。さらにとてもレーベル[FLAVOUR OF SOUND]に対して私は感謝している。だからこそ今すぐに盤の制作には入れないし、次の盤の話をレーベルに振るのも控えている。いや、作らせてもらえるんだったら作るけどね(笑)

良いレーベルだと思う。小さいながらに、もう10年以上も続けている老舗レーベルである。たった一つのコンサートをするだけでも、何かしらすれ違いが起こり、ストレスの溜まる事が常である私だが、レーベルとは、ましてや盤制作などという年単位のやりとりなのに、そういった事が殆どない。レーベルのセンスが特別に良いわけでも、僕と無性にセンスが合うわけでもないのだが、単純に理解がある。単純に気に入ってくれている。それだけで大きな揉め事やストレスが無かったのは、私にとって奇跡的だったとさえ思う。それは本当にレーベルの持つ力、レーベルの方々の持つ人間的な力だと思う。

もちろんこの先もずっとこのレーベル一つから発表していくわけにもいかないだろう。しかし次作はこのレーベルから発表できたらと考えている。

1.31

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