日記のようなもの_12月

芸術など全くくだらない。笑ってしまう。
12.21


よくものをみる目は浅くうすい目で 目尻より後方に向かって意識を走らせる
逆に何もみない目は丸く見開いた目 もしくは瞼だけを閉じ、中には見開いた目が ある状態。普段、できるだけ うす目を心掛ける。 12.22


ごくわずかの使える金は全てレコードに変わる。ほんとは本も映画も良い食材も 酒も欲しいが、とても無理。でもレコードだけは買わなければ死んでしまう。こ れはもう作曲や演奏と同じ。生理的欲求の対象のひとつ。有り難いことにレコー ドは捜せば、破格の値段で堪らない名盤がゴロゴロある。考えただけでもムズム ズっとくる。…そういえば、数カ月ほど前に大阪のとあるホールで弦楽四重奏の 国際コンクールがあって、安く観られるので行った。いやいや、駄目、ほんとに 駄目。あなた方分かってる?言っとくけどハードルは高いのだよ?もう現代には 素晴らしい録音がすでに山ほどあるのだから。それはあんまりだと言うかもしれ ないけど、実際、カザルスに勝つ気がないならチェロ弾く資格なし。ベートーヴ ェンを尊敬できないのが二流だとしても、ベートーヴェンに喧嘩を売れない奴は 三流以下だよ。過去の偉大な作曲家がした全ての発見と魂と苦痛より、さらに多 くの発見と苦痛を見出だし捧げない限り、楽譜から音を取り出した時点でそれは 美を失う。現代でそれを演奏するためには、
当然過去の到達点を越えなければ、少なくともそのために悪戦苦闘せねば。…ど うもクラシック業界の人たちはその辺を勘違いしている人が多い。だから死ぬ気 でレコードを聴いてない人が多い。言っておくけれど、音楽を聴いてるかどうか ってのは、顔つきに現れるのだよ。  12.10


山本精一。当たり前に謙虚。ごくごく普通のことを当たり前に真面目にやってお られる。とっても普通なのに唯一無二。初めて電話で話したときから勉強になっ た。『石切と4つのコンチェルト』のジャケを見て、笑ってくれた。うれしい。 12.15


白紙。何もしないことへの敗北。端から承知の上で無駄なことにひたすら悪戦苦 闘。狂人。
毎日、水の音を聴き敗北。夜、葉っぱを眺め敗北。
狂人と宇宙を繋ぐ努力など全く無意味。しかし、逆にそれ以外に試みるべきもの はない。
12.16


「普段なにしてるの?」大変むずかしい質問だ。そんなことよく判らない。ある 一日。
昼12時に起きる。くもり。昨日の晩飯の残り、味噌汁を温め、食す。豆を挽き コーヒーをいれる、この作業はやはり好き。ここから小一時間ほど記憶なし。図 書館へ行く。インターネットで色々観て疲れる。リゲティのオペラとメンフィス スリムとアート・アンサンブル・オブ・シカゴのCD、メレディスモンクの映画 借りる。今日はここ担当のきれいな職員見かけず。突如、スナイダーズのCHEDDAR CHEESE 味が食べたくなり、買いに行く。248円。あっ十円玉ほしいなーって何を思っ たか302円渡す、54円うけとる。食す。

歩道を歩いてたら、後から男の子が私の腰にエルボーをかましながら、「合~体 ~ッ!」と叫びつつ走り去る。私から何か変な空気が出ているのか、子供はいつ も不思議そうに私を眺める。

家に帰り、さっそくメンフィススリムを聴く。いやーエロい。ブルースってなん てエロいんだろう。感動する。クラシックを聴かずに死んでもいいし、ジャズを 知らずに死んでもよいが、ブルースには人間ならば一度は犯された方がよい。な どと、私はもっぱらクラシックに犯されているが。

作曲する。(小一時間)

独り言。(小一時間)

作曲する。(小一時間)

…………。(小一時間)


私の耳は猫の「フーフーッ!」という威嚇する声にかなり敏感。深夜、部屋でぼ ーっとしてて、フーッて聞こえる!慌てて庭に出る。声を探す。かなり遠い!川 の音に紛れながら、近づく。猫の威嚇は波みたいに高まり、おさまり、また高ま る。
いやはや、とても興奮する。真っ暗闇の中で二匹プラス一匹の生物がすごく興奮 している。私がここに住みだして、僕を最も救ったのは猫に違いない。半笑いで スキップなどしながら家に帰る。

メリー、クリスマス。

2008.12.25

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