白紙
白紙への敗北を感じつつも、作品を制作したい欲求は常にある。特に音源制作についてはやはり重要な位置を占めている。以前のように、立派な作品を作りたいというような考えは無くなり、今はとにかく日々の悪戦苦闘を消化し形にしたいと思う。そしてなおかつ成立したい。自分の中だけでなく、外だけでなく、成立するようなものを作りたい。実は頭の中では2008年5月ごろからもう制作は始めていて、作業には入ってないが作っては壊し、作っては壊ししている。録音に入っていかない限り、この循環は意味もなく回り続ける。8月に作曲法が変わり、それから恐るべき速度で、ありとあらゆる音楽的な変化がやって来て、12月にはまたその全ての考えが変わり、今は何と言うか音楽に対して自分が水平に位置していて、良くも悪くも白紙である。
それにしてもこの半年で大きく変化したのは、根っこでも葉っぱでもなく、その木が生えている星の成長というか、その大気全体の拡がりのようなものだった。そのおかげで一枚の葉っぱに対する関心が薄くなった。だから力は抜けたし、変な自我も薄れたが、かわりに戸惑っているのだろう。まさに白紙に対する敗北。なにもしなくても良くなってしまった。
しかし、そんな事できるわけもなく、食欲がある限り、性欲がある限り、物欲がある限り、傲慢な追求心は同じように腹を空かす。そこで禁欲に向かう気も私には全くない。
という事で私は制作する意欲、満々であります。『白紙』への敗北を知りつつも、この半年の激動の変化と練り上げた楽曲を、ちっぽけながらも作品に消化したいわけです。そしてなおかつ、先ほどにも書いたように成立できるようなものを作りたい。つまり、耳を傾けてくれる方々に届けたいという、当たり前の考えも強く持って参りました。
白紙に敗北することで、ようやく「こだわりを持ちながら、こだわりを捨てること」も少し習得できたようであるし、そのおかげでコンサートへの流れも潤滑になるに違いない。そのような気持ちでおる。
『白紙』 新譜の標題はこれでよいかも知れない…が、無論まだ未定。
1.6