盲目の三味線弾き

盲目の三味線弾きといえば、高橋竹山であろう。
その演奏はもはや鳥のさえずりに匹敵する域に達している。私が鳥を出してまで称賛するということは、それは師匠の領域だと言うに等しい。ちなみに竹山の自宅には「鳥の声」のカセットテープが並んでいたのを、何かの映像で見たことがある。

高橋竹山の演奏を聴くといつも、ジョアン・ジルベルトの演奏を連想する...津軽三味線特有のリズムがそれを連想させるのか、竹山特有のリズムがそうさせるのか...おそらく後者だろう。

もう一人連想させるのはカザルスである。
この連想は何だろうか。それは演奏ではなく、存在感なのかもしれない。


そんなことを考えているとき、ふとある事を思い出した。
昔...、広島の田舎の小学生だったころ。学校に盲目の三味線弾きが来たことがある。体育館でその演奏を聴いた。そしてそれが津軽三味線だったことも記憶している。あれは、もしかすると高橋竹山だったのだろうか。おぼろげな記憶の中の印象と、竹山の印象は確かに一致している。そして、子供ながらにその体育館で聴いた津軽三味線の音色が、強烈だったことも記憶している。すぐさま必死にネットで調べてみるが、まだネットも栄える前のこと...それも田舎の小学校の行事など見つかるわけがなかった。おそらくネットにはあがっていないだろう。
真相は闇の中だ。

ならば、あれは高橋竹山だったと思う方が幸せであろう。
ただの小学生にこれほどまで強烈な印象を残すことのできる「盲目の津軽三味線弾き」などそうそう居るはずもない。


僕は小学生のころ、学校の体育館で高橋竹山の演奏を聴いたことがある。


2011.08.27

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